ポルトガル料理は、歴史上の経緯から様々な国の影響を受けています。シナモンやサフランはかつての支配者たちの影響ですし、パプリカやバニラといった、かつてのポルトガルの植民地が原産のものは大航海時代の影響と言えます。また、ポルトガル料理では香草のコリアンダーを多用しますが、これはヨーロッパでは珍しいのですよ。

今回は、豚肉とあさりのアレンテージョ煮込みとアロース・デ・ポルヴォ（ポルトガル風タコのリゾット）へのペアリングとして、設立わずか5年でポルトガル国内でワイナリーオブザイヤーに選ばれるなど、今注目の生産者が作るドリー ティント アデガマインをチョイスしています。
ルトガルの地場品種であるトウリガ ナショナルを35% とアラゴネス 15%、国際品種のシラーと ピノ ノワールを30%と20%で醸しています。スミレやワイルドベリー、カシスなどの凝縮した香りが豊かです。グラスに注ぐと、ベリーの香りの中に、少し、コンポートしたニュアンスがあるのは、産地であるIGP リスボンがポルトガルでも中部に位置しており、豊かな太陽に恵まれているからです。ミディアムボディで、タンニンはしっかりとありつつも、口中にフルーティーな果実味が広がります。瑞々しく洗練された味わいのワインです。

まず、豚肉とあさりのアレンテージョ煮込みとドリー ティント アデガマインをペアリングしてみます。豊かな果実味が、パプリカを纏った豚肉の旨味を、きちんと受け止めていました。ドリー ティントのしっかりとしたタンニンがイベリコ豚と出会う事で、もともと甘いタッチのあるイベリコ豚の脂が、更に一層、甘くコクのある味わいに変化し、アサリの磯っぽさを感じさせるヨードのタッチにパプリカの風味が加わり絶妙なバランスになっています。豚とアサリのアレンテージョ風の山の産物と海の産物の不思議な調和感の世界に、ドリー ティントはイベリコ豚との万全なマリアージュとアサリの持ち味もちゃんと活かした素敵なマリアージュになっています。

一方、アロース・デ・ポルヴォは一見すると白ワインに合いそうな料理です。まず、ご飯部分を一匙掬って口に運びます。淡白ながら、しっかりと芯のある旨味が広がります。そこにドリー ティントを一口飲むと、ワインの充実した果実味がアロース・デ・ポルヴォに奥行を与えて、美味しくバランスしています。タコを非常に柔らかく、タコのむっちりとした筋肉の繊維の間から、ほんのりとした甘みが出てきます。その繊細な甘みとドリー ティントの素直な赤い果実の風味が、非常に上手く折り合っています。