アルザスは、五角形に例えられるフランスの東の肩にあり、ドイツとライン川で国境を接しています。ドイツ風の木組みの家々が立ち並び、街のいたるところに花壇があります。およそ南北に170kmも続くワイン街道と呼ばれる道があり、この街道の周辺にある畑たちが、フランスの銘醸地での一つであるアルザス地方です。

今回は、シュークルートとベックオフとタルトフランベに、「リースリング キュヴェ ユーロップ ドップ オ ムーラン」をペアリングしています。このワインはリクヴィール周辺のリースリングに最適な石灰質土壌で栽培された葡萄から造られており、いきいきとしたシトラス系果実の風味とバランスの良さを特長とした、いかにもリースリングらしいチャーミングなワインです。

実際に今回の料理とこのワインを合わせてみると「その地方の郷土料理と地元のワインとの相性は、恐るべきものがあるなぁ…」と再確認しました。
郷土料理とその地方のワインとは、何百年にも渡って切磋琢磨してきた関係にあります。
伝統料理には、その土地のワインの中で最も良く合うものが選ばれる。選ばれた中から、栽培や醸造の工夫によってさらに合うワインが作られ、全体のワインのレベルが上がる。ワインのレベルが上がると、その進化に合わせて料理も洗練されていく。その変化に合わせ、またワインに進化が生まれる…。
そうやって、ある意味鉄板のコンビネーションが生まれるのです。
ベックオフとリースリングを合わせた時に、しみじみその意味を噛みしめました。今回合わせたのは白ワインですが、牛肉のコクとのバランスが絶妙でした。豚肉と合わせると、豚肉の持つ素材としての旨味、甘みが強く感じられます。シュークルート（ザワークラウト）の発酵による酸味とワインの味わいとが素晴らしいマリアージュで、複雑な味わいが織りなす重奏感が素敵です。
タルトフランベは生地がふっくらとしており、具材はフロマージュブランと玉ねぎとベーコンという、極めてシンプルな構成ですが、リースリングと自然に馴染んでいます。フロマージュブランの爽やかな酸味とリースリングの酸味とが綺麗にシンクロしていて、合わせた口中で、甘さ感がすぅーっと伸びていく、快感とも言える余韻が愉しめます。

ぜひ、互いに高め合ってきた郷土料理と地元のワインの絆に思いを馳せながら、絶妙なマリアージュをお愉しみください。