トリップコラム ヴェネツィア篇

ヴェネツィアについて

今回テーマのヴェネツィアは、ヴェネト州の州都で、周辺にはアディジェ川、ブレンタ川、ピアーヴェ川がアルプスの雪解け水を運び、水が豊かな地域です。
ワインの大産地で、イタリア州別ワイン生産量のトップの州である事が多いです。ソアーヴェ、ヴァルポリチェッラ、バルドリーノなどの伝統的に有名な産地を多く抱えています。

ヴェネト州もヴェネツィアも共に、原始時代に先住していた、インド・ヨーロッパ語族である「ウェネティ人の土地」という意味です。ヴェネト州の文化を理解する時には、ヴェネツィアの影響を強く受けている海岸地帯と、農業地である内陸部は「別の国」位に違いがある事を頭に置いておく必要があります。ヴェネツィアは16世紀から17世紀に文化が爛熟し退廃的とさえ思える発展をみせました。一方、内陸部は保守的な典型的な農村で、酒を酌み交わす事を重視する文化です。海岸地帯は当然、海産の魚介を多く食べ、内陸部は川魚や淡水魚の鱒、鯉、鰻などを食べるなど同じ地域でも大きな違いがあります。

お料理とワインのペアリングノート

今回は、ヴェネト地方の海の幸を使った定番メニューのイカスミのスパゲッティと、4種類のチケッティを用意しました。イタリアでワインのお供になる小皿料理はチケッティと呼ばれ親しまれています。

旨みたっぷりイカスミのスパゲッティについて

スミイカの墨にはグリシン、アラニン、プロリンなどの旨味や甘さを感じさせるアミノ酸が沢山含まれています。なので、南欧や沖縄ではイカスミ料理が良く食べられるのですよ。旨味をたっぷりと吸い込んだパスタとタヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ/シャルドネの相性は抜群でした。イカの素材そのものが持つ、ほのかな甘さが、ワインと合わせる事で、より一層際立ち味わう事ができます。

4種のチケッティ(ヴェネツィア伝統小皿料理)について

<鰯のエスカベッシュ>
鰯の個性的な風味を、爽やかな酢しめのエスカベッシュで頂きます。タヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ/シャルドネと合わせると、濃い鰯の旨味やコクが軽やかに広がります。ワインの柑橘を思わせる香りが爽やかさを強調してとても美味しかったです。
<タラのマンテカート>
タラのマンテカートは大航海時代からの伝統の料理です。ジャガイモのホクホクにタラの旨味が閉じ込められています。タヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ/シャルドネを単体で飲むと、かなり軽く感じますが、タラのマンテカートと合わせると、タラの味わいがくっきりと明確に判ります。軽めのワインが、味わい深く変化する、「料理もワインも両方が上がる」なかなか良い相性だと思いました。
<小ダコのトマト煮>
タコは、良く「究極の白身魚」と言われるくらい味わいが繊細です。そのタコ自体の味わいがドライトマトやトマトペーストの甘酸っぱい味わいで広がり、タヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ/シャルドネと出会う事で、三位一体となります。トレッビアーノとトマトソースは本当に良く合いますよね。
<小玉ねぎのバルサミコマリネ>
バルサミコの強い味わいを軽いワインであるタヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ/シャルドネが上手に受け止めています。小玉葱の刺激的で少し野菜的な風味も包み込むように纏めてくれています。

タヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ/シャルドネについて

今回のワインはタヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ/シャルドネです。熟したグレープフルーツやりんごを思わせる香りがあり、黄色い花やハチミツなどを連想させる甘い香りが心地よく広がります。味わいは爽やかで、フレッシュな果実とまろやかな酸味とのバランスが良いワインです。

タヴェルネッロは1983年に発売され、40年愛され続けている「小さな居酒屋」を意味する国民的ワインブランドです。イタリアワインブランドで販売量はなんと世界No.1 ※、世界中で親しまれているイタリアワインです。

タヴェルネッロを醸しているカヴィロ社はエミリア・ロマーニャ州に本拠地を置く会社です。オルガニコは、タヴェルネッロブランドの中のオーガニックワインです。オーガニックワインは、皆さんはご存知だとは思いますが、オーガニックぶどうから造られるワインのことです。原則として、化学肥料、農薬、除草剤を使用せず、遺伝子操作や放射線処理が禁止された有機農法によって生産されたぶどう(=オーガニックぶどう)を用いてつくられます。
タヴェルネッロには、EUオーガニックの認証マークである、緑色のEU旗を模した「ユーロリーフ」が付けられています。
(※出典:IMPACT Databank 2012 Edition Top25 Table Wine Brands’ Share of Total Table Wine)

サントリーソムリエ 久保 將

一般社団法人日本ソムリエ協会の執行役員でもあり、サントリーではワインのスペシャリストとして、長年ワインの啓蒙活動に従事。

社内外で育てたソムリエ、ワインアドバイザーはなんと1,000名以上。

久保ソムリエの著書「ワインテイスティングの基礎知識」は必見。