トリップコラム ラングドック篇
お料理とワインのペアリングノート
<鴨と白いんげん豆のカスレ風>
ソーセージをかじり、オーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエールのグラスを近づけると、カスレからのスパイシーな香りと、グラスから立ち昇るワインのスパイシーなタッチとが共鳴します。ソーセージの肉汁と力のある赤ワインのタンニンが出会い甘くなります。鴨の身の鉄っぽさと、オーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエールの主要品種であるシラーの力強く獣のニュアンスがある所が、良く合っています。羊独特の風味とも自然にオーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエールがマッチするのは、この地方で羊がずっと食べられてきているからかもしれません。
<セップ茸香る茄子のクリームグラタン>
セップ茸香る茄子のクリームグラタンの豊かな味わいとオーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエールのボリューム感も丁度良いバランスです。地中海沿岸にはハーブが自然に集まって出来た低灌木の茂みが沢山あります。その傍を歩いた時に感じられるスパイシーさを、今回の料理でも楽しんでいただける一工夫をご紹介します。エルブドプロヴァンスという名のスパイスを購入いただき、ナスのグラタンが焼き上がった時に更に一振りしてみてください。オーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエールとの相性が更に高まるのと、地中海のバカンスに来て、ベランダで食事をしているかのような風が吹いてきます。
ラングドック地方の伝統料理、カスレについて
ラングドックの地元の方に「ラングドックで最も有名な料理は?」と訊ねると十中八九「カスレさ!」という答えが返ってきます。カスレは家庭でも良く作られる料理ですが、大変奥深い料理です。
カスレはカルカッソンヌ、トゥールーズ、カステルノダリーの3つの街でそれぞれ別に進化を続けたと言われています。一番古いと言われているのがカステルノダリーのカスレです。カステルノダリーはラングドック・ルーション地域圏で一番大きな都市であるモンペリエから150㎞、ナルボンヌから内陸に90㎞行った小さな街です。カステルノダリーではフランスとイギリスとの百年戦争の時に食べ物が少なくなり、塩蔵の豚と乾物の白インゲンしか無くなって仕方なくそれを煮込んだら美味しかったのが始まりではないか?と言われています。
トゥールーズのカスレは生ソーセージがポイントです。トゥールーズソーセージと呼ばれるソーセージで、太い粗挽きソーセージです。塩胡椒だけがこだわりというものと、白ワインやナツメグ、オールスパイスなどの香辛料を複雑に使い、豊かな香りに拘る店もあるようです。
カルカッソンヌのカスレの特徴は鴨です。この街はフォアグラを作りますので鴨の本体も沢山あり、フォアグラを取る為の鴨を焼くと大量の鴨脂がでます。その脂で煮たのが鴨のコンフィです。カルカッソンヌのカスレには、その鴨のコンフィが入るのです。
鴨と白いんげん豆のカスレ風
セップ茸香る茄子のクリームグラタン
※ワインのヴィンテージが写真とは異なります。
オーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエール
今回のワインは「オーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエール」です。
オーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエール2022はメドックワインの格付け一級で、しかも、その筆頭格付けであるシャトー ラフィット ロートシルトを擁するドメーヌ バロン ド ロートシルトが醸すワインです。
ワイナリーはナルボンヌ近くのコルビエール地区にあり、中世にはシトー派修道院が農場として運営していました。そのぶどう畑は、フランス革命を経て競売にかけられ、その後、オーナーが変わる度に荒廃し、すっかり荒れてしまっていました。そのドメーヌ ド オーシエールをドメーヌ バロン ド ロートシルトのエリック ド ロスチャイルド男爵が1999年に購入、土壌調査を綿密に実施し適切な品種に植え替えて行きました。
オーシエール セレクション ドメーヌ ド オーシエールの色は少し明るさをもったダークチェリーレッドです。グラスからは赤いさくらんぼ、ブルーベリー、スミレ、アイリスなどを思わせる華やかな香りがしてきます。スパイシーなタッチも強めにあり、光豊かな地中海沿岸であるラングドックで、よく見かけるガリグー(低灌木がところどころに見られる荒れ地)を吹きわたる風、「ガリグーの風」を感じさせます。甘苦系のスパイスであるリコリスやクローブを思わせる所もあります。口に入れると程良い果実の凝縮感です。酸は柔らかく穏やかですがエレガントさがあります。ミディアムよりわずかに厚みを感じられる程良い厚み。まろやかで大きさのある、でも大きすぎない、飲み心地の良いワインです。
サントリーソムリエ 久保 將
一般社団法人日本ソムリエ協会の執行役員でもあり、サントリーではワインのスペシャリストとして、長年ワインの啓蒙活動に従事。
社内外で育てたソムリエ、ワインアドバイザーはなんと1,000名以上。
久保ソムリエの著書「ワインテイスティングの基礎知識」は必見。